スーツの襟の内側の範洲、シャツとネクタイがのぞく部分を「Vゾーン」といいます。Vゾーンはあなたの顔に一番近いところですから、それだけあなたのイメージに与える影響が強く、他人から見ても最も目立つ場所です。ビジネスの場面に限らず、初対面なら、まず顔を見ますよね。あなたがそのときスーツを着ていれば、あなたの顔といっしょにVゾーンも相手の視界に入っているはずです。相手の記憶にはVゾーンとあなたの顔が同じフレームにおさまるわけで、決して手を抜けない部分なのです。「バランスがなによりも大切」といわれますが、Vゾーンでは、シャツとネクタイのバランスはもちろんのこと、Vゾーンと体全体のバランスも大変重要なポイントになってきます。Vゾーンの大きさはスーツの前開きの大きさで決定されます。例えば、3つボタンだとVゾーンは比較的狭くなりますし、2つボタンだと縦に長く広くなります。最近では2つボタンでもボタン位置が比較的高く設定されているものもありますので、着比べてみるとよいでしょう。
暑い夏だった。ハンカチで噴き出す汗を押さえながら考えたことがある。「夏の服がないのよ」ない、とはいえないが少ない。Tシャツにコットンのスカート、コットンのワンピース、麻のあれこれ、カットソーのスカートなどは外出着にしなくなって長い。毎年、さよならする服(種類といえるかもしれない)があって、それに代わるものが追いつかない。ほら、今着ている服だって夏のものではない。オールシーズン着られるシルクのシャツとポリエステルのスカート。考えれば靴もバッグもオールシーズンのもの。外は暑くても電車や車の中はク上フーで寒いくらいだし、デパートも映画館も充分に冷えている。我慢しなければいけないのは外にいる間だけ。耐えられない暑さ(などというものには出合ったことがないけれど、大袈裟にいえば)のときはどうすればいいの。シルクのシャツに汗は似合わない。
「スーツ」という言葉の定義を明らかにしておかねばなるまい。現代において、「スーツ」ないし「背広」と呼ばれている男性服は、襟つき長袖上着と筒型の長ズボンという組み合わせ。時にはヴェストを合わせ、上着のVゾーンからは襟つきシャツとタイを覗かせる、というタイプの服である。「スーツ」にはたしかに「同色・同素材でできた上下ぞろいの服」という意味もあるにはあるが、上下別々の服地であっても、基本構成要素でできていれば、服飾史上、それは「スーツ」と呼ばれてきた(現代でも黒の上着に縞ズボンを合わせる「ディレクターズ・スーツ」などの例がある)。いやむしろ、上下同色・同素材の服は、わざわざ「上下揃いのスーツ」と断わりをつけられなければならなかったほど、それは例外的な服とみなされていたのである。